『改訂新版 市川のむかし話』を刊行しました 2012年
市川民話の会では、2012年、『改訂新版 市川のむかし話』を刊行しました。 1500円税別
市川民話の会、市川市文学ミュージアムでご購入できます。
『千葉日報』2012年11月16日 16:05 「後世に語り継ぐ先人たちの逸話 20年ぶり、新作含め51話 「市川のむかし話」民話の会が改訂版」
市川市周辺で語り継がれてきた民話を集めた書籍「市川のむかし話」の改訂版が出版される。制作した市川民話の会が約20年ぶりに内容を見直し、新作を含む51話を収録した。同会の高田和正会長(73)は「先人たちが築いた生活様式、文化、農業、工業などの上に今日の私たちの生活が成り立っていることを忘れてはならない」と民話継承の大切さを訴える。
社会環境の変化とともに失われつつある民話を掘り起こし後世に語り継ごうと、市内の民家訪問などを続けている同会は1980年に最初の「市川のむかし話」を出版。その10年後に「続・市川のむかし話」を刊行している。今回の改訂版は1冊目の全話と2冊目からの抜粋に加え、前2冊に未収録の話をいくつか加え「決定版という位置付け」(同会)としている。
初収録となる新作の一つ「梨づくりの善六さん」は、市川の梨づくりの始祖とされる川上善六が、美濃尾張(現在の岐阜県と愛知県の境辺り)まで足を運んで梨の作り方を研究するなど、苦労して梨づくりを成功させるまでを一話にまとめている。このほか、数々の逸話を残した変わり者の重右衛門という男にまつわる23の話など230ページ分を盛り込んだ。
『市川よみうり』2012年12月8日号「『改訂新版 市川のむかし話』刊行~「語り」を意識した改訂へ」
11月21日、市川民話の会の編集・発行になる『改訂新版・市川のむかし話』が刊行された。A5版で230ページ、イラストもたくさん入った、読みやすい本である。
同日には、〝市川民話の会創立35周年「改訂新版・市川のむかし話」刊行記念のつどい〟が、市川グランドホテルで開催された。大久保博市川市長ほか、市内の語り関係団体や文化団体関係者など、100人近い参列者が、刊行をともに祝った。
市川民話の会は、昭和53年に発足し、市川の民話を記録し、次代に継承することを目的に活動してきた。
地元に長く住んでおられる方から伺(うかが)った話は、テープに録音し、記録性の高い資料集として、『市川の伝承民話』1~8集としてまとめてきた(7集までは市川市教育委員会発行。8集は市川民話の会発行)。
また、採話した民話をもとに、子どもにも分かりやすい読み物風にまとめた、『市川のむかし話』(昭和55年)、『続市川のむかし話』(平成2)も刊行してきた。
市川民話の会の高田和正会長は、「『市川のむかし話』〔改訂新版〕の刊行にあたって」で、次のように記している。
〈『市川のむかし話』刊行のあと、三〇年を経過した頃から、多くの市民の皆さんから再刊行の要望が多く寄せられてきました。しかし、今日では再販が不可能なため、この機会に正編、続編を見直して、改訂版を刊行することにいたしました。
改訂版の編集にあたっては、『市川のむかし話』正編のすべての話を再録したうえに、『続・市川のむかし話』から選び出した話を加えた、いわば決定版といった性格の本としています。また、判型はお子さんたちにも読みやすいA5版とし、二段組を採用しました。(中略)
文章表現については、(中略)私たち会員が、長い間にわたり、市内各地の話者を訪ね、お聞きした話を可能な限り忠実に記録したものを、かつて「市川の伝承民話」として発表しております。今回、それを基礎としながら子どもから大人まで、幅広く読んでいただき、市川の地域の民話に関心を持つとともに、そこから地域社会の文化を学び、先人たちの知恵を学び、それが次代へと継承していくことを期待して文章をまとめました。
昔話については、語りを生かした文章表現とし、話し手と聞き手の呼吸を感じとれるように配慮しています。伝説、物語などについては、文語体を主とし、語尾は、です・ます調にしました。〉
地域に伝わる民話をまとめた本の、全国的な傾向として、1980年代頃は、読み物的な本が多く出版されていたが、2000年以降は、「語り」の特徴を踏まえた出版が多くなってきている。これは、民話は本来、文字として読まれるものではなく、語り手と聴き手の間で語られるものであるとの認識が、一般的になってきたことによるものといえる。ことに昨今は、学校教育のなかでも、民話の語りに取り組む学習が増えており、民話が本来もつ「語り」を意識した本の刊行は、市川でも切望されるものであった。
市川の伝承的な語られ方は、「むかしむかしあったとよ」と語り始められ、「~だったとよ」とか「~だったって」などの言い回しで語られ、めでたい話の最後は、「これでいちがさあけた」といった語り収めが付せられてきた。「いちがさあけた」は、「一期(いちご)栄えた」(一生幸せに暮らしました)の意味である。
今回の改訂新版では、かつての『市川のむかし話』では、「です・ます」とされていた同じ話が、「だったとよ」や「だったって」などと、語りに近い形にして収められている。『市川のむかし話』は、絶版となっており、図書館などで見ていただくしかないが、同じ話を読み比べてみるのも、面白いのではないだろうか。
ところで、刊行記念のつどいで、大久保市長から、「本としてだけでなく、映像として伝えていくこともお願いしたい」との祝辞をいただいた。民話の「語り」の継承の仕方として、ありがたい課題を承ったといえる。
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